六十


八畳一間のアパルトを出て 僕は六十になりました
裏の公園の もみじのベンチに座り 僕は六十になりました
かつてそうしたように 行き先のないバスに乗り
僕は六十になりました
名前しか知らない 川を二時間見て 僕は六十になりました
昨日十九だった僕が 今日六十になったとき 僕はなにも思いませんでした