川底の鉄

むづかしい言葉を余計につかって
あなたは誰よりかわいくなろうとする
誰も望んではいなかった。
苦し紛れに願ったことも
まるで本当ではないようだった
それは廊下のつきあたりにあって
今も唸っている
そうせずにはいられない
二度目に顔を上げたとき
ホームに電車はひとつもなかった
川底に沈む鉄屑と並んで
見上げた水面は目映く
飛沫をあげた瓶は赤茶けて
ゆっくりとここへ降ってきた
そうせずにはいられない
たったそれだけのことが
どうしてもできなかった
あまりに頭が悪すぎた。
背中を預けた扉が急に開いて
きみは三べん回って止まる
したたかに顔を打ちつける
走り去る列車から笑い声がきこえる
きこえる。今もきこえる きこえるだろう?
出来の悪いすべてを抱えて
たったそれだけのことが
どうしてもできなかった
線をまっすぐ引くような
たったそれだけのことが