神社が燃えた



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はやく寝たいな
自分に送ったメールが届かないです
なに探してんの



神社が燃えた
友人と瀬戸内に小旅行に行き、戻ると神社が燃えていた。三日前の深夜に出火して、社殿も本殿も全焼したらしい。神社って燃えるんだ  とはじめに思ったがよく考えれば燃えるものしか無いのだから。暮れに祖父と飾った絵馬も 子供の頃背伸びをして賽銭箱に入れた光る五円玉もすべて燃えたのだと思った。荷物の整理もせずに家を出た。
自宅から神社までは五分もしない。見慣れた長い参道の奥に焼け落ちた社殿が見えた。
近づくと、瓦がわずかに残る以外には何の面影も残していない社殿と、その上空を覆っていた木々も黒く焦げついている。こんな高くにまで炎が上がったのだろうか。
社殿の隣にそびえる樹齢の高いぶなの木も幹に穴を開けており、大昔に若者が力を試したという大石だけが変わった表情もなく鎮座している。
拝殿の前は焼け落ちた破片でいっぱいで、賽銭箱や鈴緒は残骸すら見つけられなかった。さらに奥に進むと本殿もまた黒焦げの塊となっていて、何の気配も感じられなかった。
もっと警察や消防や、何かの出入りがあるのかと思ったがそこには誰もおらず そして誰も訪れなかった。燃えた神社と自分だけがあった。
「誰かがつけたらしい」
火ぃ。僕が帰宅するやいなや、こちらを見もせずに父が言った。薄暗い部屋の中で背中越しの煙草がやけにちらついて見える。二ヶ月後に予定されていた囃子祭りは中止になったと、参道の掲示板に筆文字で書かれていた。
僕は、神社は燃えないと思っていた。けれど神社は燃えた。跡形もなく。燃やした人間も、神社は燃えないと思っていたのかもしれない。神社が有った時、そこにあったものはみな どこに行ったのだろう。焼けついた社殿の中で あの時も僕を見ていたのだろうか。




四年前神社がマジで燃えたとき